豊橋筆について(杉浦製筆所さんにお話を伺って)

 

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 先日、豊橋伝統的工芸品である。「豊橋筆」の製作会社である、

杉浦製筆所さんに実際に筆作り作業の様子や、社長の杉浦さんとその奥さんにお話を伺

って来た。

 

 以前、伝統的工芸品についてブログでも簡単に紹介したが、伝統的工芸品には、

認定のためのいくつか条件があり、愛知県内では現在14品目が国から認定されている。

 

 まずは、14品目の中の一つである豊橋筆に関しての簡単なご紹介をしたいと思う。

 

 

1. 豊橋筆はどのようにしてはじまったか

 豊橋筆の起源は1804年(文化元年 江戸時代)にさかのぼり、京都の鈴木甚左衛門が吉田藩(豊橋)学問所の御用筆匠に迎えられ、毛筆を製造したのがはじまりであるといわれています。

 幕末になると、吉田藩の財政も苦しくなり、節約と減俸に苦しめられた下級武士が、人の目につかずに内職できるという理由で筆作りに励むようになりました。

 また豊橋地方は北部に山地があったため、穂首の原材料となる狸(たぬき)、いたちなどの獣毛や、筆管(軸)の材料である竹が豊富であったことから、産地として発展しました。

 

 

2. 豊橋筆ならではの特徴

 原材料の混毛に、水を用いて交ぜあわせる「練りまぜ」の工程を用いることに、豊橋筆最大の特徴があります。この工程により"墨含みが良く、墨はけが遅い”ことが豊橋筆ならではの特徴です。

 

 

3. 現在の豊橋筆について

 昭和51年12月15日には、その歴史と品質が高く評価され、当時通称産業省(現経済産業省)より「伝統的工芸品」の指定を受けています。

 

 

 

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 ここまでが、豊橋筆についての簡単なご紹介ですが、ここからは実際にお話を伺ってわかったこと、感じたことをお伝えしたいと思う。

 

 1). 豊橋筆は職人個人の責任で作る。

  今回杉浦製筆所を伺ってわかったことの一つが、この個人の責任で豊橋筆を作る

 という点である。これは、一人一人が自分の筆を責任持って筆作りの全工程を行うと

 いうもので、豊橋筆ならではの作り方と言ってもいいと思う。

 多くの伝統的工芸品の中でも、筆の産地は他にもあるが、その多くは、各工程ごと

 に分業制度をとっているという。

  

  これは、使い手の要望に細かく対応できることや、使い手であるお客さんからのフ

 ィードバックに対して作り手が責任を持って対処できることなどといった利点があ

 る。

 

2). 作り手と使い手を繋ぐことを大切にしている。

  お話を伺う中で、全国の百貨店をはじめとする物産展にも参加する機会があるとい

 う。 実際、物産展に参加することで、製作のお仕事が止まってしまうことになるが、

 作り手である職人さんが、使い手であるお客さんと直接顔をみてお話ができる貴重な

 機会になっていると言う。

  また使い手の方が、作り手の方に直接お会いできる機会ということで、お客さんか

 らも喜ぶ声も多いという。

 

  実際、作り手である職人さんが、使い手の方と繋がることで自分の仕事が使い手の

 ためになっていることを実感できる。

  また、反対に使い手のためになっていない反省点なども次の製作に向けての貴重な

 意見として生かせることも利点として挙げられる。

 

 

3). 情報発信とその中身が重要。  

  これは、伝統的工芸品に限ったことではないが、やはり、情報発信と中身が重要だ

 ということを改めて実感した。実際、今回訪れた杉浦さんも広報担当が欲しいともお

 話して下さった。

  しかし、一概に広報や情報発信といってもその中身を吟味する必要がある。一体何

 を伝えたいのか、どんなことを受け手に感じて欲しいのか、どんな成果を期待するの

 か。それらを受け手の立場に立ちながら考えるのが、情報の伝え手の仕事だと感じ

 た。

 

 

 

【今回お話を伺って感じたこと】

  今回、杉浦製筆所さんを伺って一番感じたことは、一つ一つのお仕事、ものづくり

 を本当に誠実にされているということだった。

  

  だが、豊橋筆を取り巻く現状は、使い手の減少や、原材料の入手が困難であっ

 たり、価格が高騰したりと厳しいものがある。 

  

  こうした日本の誠実なものづくりの姿勢を残していくためにも、まずは多くの人に

 その魅力を知ってもらい使って貰うことが重要だと再確認した。

  

  しかし、以前ブログでも書いたように使い手のライフスタイルが変化する今、その

 ものづくりの姿勢を受け継ぎながらも、どう今の生活の中に昇華させていくかが鍵と

 なる。

 

  変化の激しい世の中でどんな商品が売れるか、受け入れられるかもわからないが、

 まず、目の前のお客様のニーズに誠実に応え地道にものづくりをする。また新しいア

 イデアは筆に詳しい人に限らず、アイデアはそこらじゅうにあるとおっしゃった杉浦

 代表のように、より良いものづくりのためには変化を恐れない姿勢が大切なのかもし

 れない。

 

 

 

 (今回お話を伺った杉浦製筆所さん)

  株式会社杉浦製筆所

 住所:〒440-0838 愛知県豊橋市三ノ輪町5丁目13

 電話:0532-61-8155 (代表 杉浦美充さん)